養育費について
子どもがいる夫婦が離婚すると、どちらか一方が親権者となり、一人で子どもを育てていくことになります。しかし、子どもが成長して社会人になるまでには、食費や教育費、医療費だけでなく、娯楽費や交際費など、たくさんのお金が必要です。
しっかりと子どもを育てていくためには、離婚した元配偶者にも養育費を負担してもらうことが大切です。
養育費とは
養育費とは、未成熟な子どもが自立するようになるまで育てていくために必要なお金のことです。
両親が婚姻中は、言うまでもなく子どもの養育に必要なお金を分担して負担しなければなりません。離婚後は一方の親のみが親権者となりますが、もう一方の親(非親権者)も親であることに変わりはないので、引き続き養育費を負担する義務があります。
そのため、離婚して子どもの親権者となった側の親は、非親権者に対して養育費の支払いを請求できます。
養育費の相場
養育費の金額は両親の話し合いで自由に決められますが、子どもの利益を最優先に考慮して決めなければなりません。つまり、子どもを健全に育てることが可能な程度の金額を請求できるということです。
ただ、両親の経済力にも限界がありますので、親の生活水準と同等の生活を子どもにも保障すればよいと考えられています。
そこで、裁判所は両親の年収や子どもの年齢・人数に応じて養育費の目安を算出し、その結果をまとめた「養育費算定表」を公表しています。したがって、養育費算定表に掲載されている金額が、養育費の一般的な相場として捉えられています。
以下で、養育費算定表に掲載されている金額を一部ご紹介します。なお、以下のケースは両親が給与所得者の場合です。自営業者の場合は、少し金額が異なることがあります。
- 支払う側の年収500万円、受け取る側の年収0円、子ども1人(3歳)の場合…月6~8万円
- 支払う側の年収600万円、受け取る側の年収150万円、子ども2人(15歳と12歳)の場合…月8~10万円
- 支払う側の年収700万円、受け取る側の年収200万円、子ども3人(15歳と12歳と10歳)の場合…月12~14万円
養育費を決める方法
養育費は、以下の方法で決めます。できる限り、協議離婚時に親権者を決めるのと併せて、養育費の金額、支払い方法、支払期間などを具体的に取り決めておきましょう。離婚後に話し合いをしようとしても、相手に拒否されるリスクがあるのでご注意ください。
(1)話し合い
養育費は両親の話し合いで決めるのが基本です。合意ができれば、相場にとらわれず自由に内容を決めることができます。月ごとの金額に加えて、進学時の一時金や大学の学費なども考慮して話し合うとよいでしょう。
話し合いがまとまったら、口約束で済ませず、公正証書(強制執行認諾文言付き)で離婚協議書や合意書を作成することをおすすめします。公正証書にしておくことで、相手が約束どおりに養育費を支払わない場合には強制執行の申し立てが可能となります。
(2)調停・審判
話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所の手続きを利用します。これから離婚する場合には「離婚調停」を、離婚後に養育費を請求する場合には「養育費請求調停」を申し立てましょう。
家庭裁判所で中立・公平な調停委員を介して話し合うことで、(元)夫婦だけで話し合うよりも合意に至りやすくなります。「養育費請求調停」でも合意に至らない場合は、審判の手続きに移行し、家庭裁判所に養育費を決めてもらうことも可能です。
養育費を定めた調停や審判には強制力があるので、相手が支払わない場合には強制執行を申し立てることができます。
(3)裁判
これから離婚する場合(「離婚調停」を行った場合)には、審判ではなく離婚裁判に進むのが一般的です。裁判で離婚が認められれば、慰謝料や財産分与など他の離婚条件とともに親権者と養育費も判決で決められます。
確定した判決にも強制力があるので、相手が支払わない場合には強制執行を申し立てることができます。
養育費を払ってもらえないときの対処法
離婚後に養育費を払ってもらえないときは、まずは相手方に催促をして支払いを促しましょう。
それでも相手が不払いを続ける場合は、既に公正証書(強制執行認諾文言付き)を作成しているか、調停・審判、裁判で養育を決めてあれば、強制執行の申し立てが可能です。
強制執行とは、裁判所に相手の財産を差し押さえてもらい、その財産を換金するなどして未払いのお金を回収できる手続きのことです。
養育費の取り決めをしていないか、取り決めていたとしても公正証書を作成していない場合は、改めて取り決めをして公正証書を作成するか、養育費請求調停を申し立てる必要があります。
取り決めた養育費を増額・減額する方法
離婚時に養育費を取り決めたとしても、事情の変化によって養育費が足りなくなることもあるでしょう。そんなときも、基本は相手方と話し合って増額を求めることです。
話し合いがまとまらない場合は、養育費増額請求調停を申し立て、調停でも合意できない場合は審判で決めてもらうことになります。
養育費を増額してもらうためには、ご自身や子どもの病気・怪我、収入の減少、私立学校や大学に進学することになったこと、相手方の収入が増えたことなど、増額を求める理由を具体的に主張し、証拠も提出することがポイントです。
逆に、相手の収入が減少したり、再婚して扶養家族が増えたりしたような場合には、養育費の減額を求められることもあります。減額を拒否したとしても、養育費減額請求調停・審判を申し立てられることがあるので、なるべく柔軟な話し合いを心がけた方がよいでしょう。
養育費の請求を弁護士に依頼するメリット
養育費は子どもを育てていくための大切なお金なので、適切に取り決めるべきです。ただ、離婚問題で争っている夫婦が話し合おうとしても感情的になってしまい、収拾がつかなくなることもあるでしょう。
そんなときは、弁護士を間に入れて話し合うのがおすすめです。弁護士は法的な観点から論理的に相手と話し合い、説得するので、適切な養育費の取り決めが期待できます。
相手が譲らない場合でも、調停・審判や裁判の手続きを弁護士が進めていき、解決を図ります。
養育費の問題で困ったときは、当事務所へお気軽にご相談ください。お子様の将来のためにも、適切な養育費を一緒に目指しましょう。