離婚を成立させる方法には、いくつかの種類があります。そのうちのひとつが「協議離婚」です。日本で離婚する夫婦の多くが協議離婚をしています。
協議離婚とは
協議離婚とは、夫婦が話し合って合意し、離婚届を市役所等に提出することで成立する離婚のことです。離婚するための話し合いのことを「離婚協議」といいます。
他の離婚の方法としては、次のようなものがあります。
- 調停離婚…家庭裁判所で調停委員を介して話し合い、合意によって成立する離婚
- 審判離婚…調停離婚が成立しない場合に、裁判所の決定により成立する離婚
- 和解離婚…離婚裁判中に裁判官を介して話し合い、裁判上の合意によって成立する離婚
- 裁判離婚…離婚裁判で判決によって裁判所が命じる離婚
協議離婚以外はすべて、裁判所の手続きを利用して行う離婚です。
ほとんどの人は、離婚するとしても詳しい事情を第三者に知られたくないという気持ちがあるでしょうし、裁判のような大ごとにしたくなという考えもあるでしょう。そのため、離婚する夫婦の大半は協議離婚を選択しています。
協議離婚のメリット・デメリット
協議離婚の大きな特徴は、裁判所の手続きを利用しないことです。夫婦の話し合いだけですべてを決められることは大きなメリットでもありますが、場合によってはデメリットにもなることに注意しなければなりません。
協議離婚のメリット・デメリットを具体的にみていきましょう。
①メリット
協議離婚のメリットは、以下のとおりです。
- 手間や費用の負担が軽い
- 早期に離婚できることが多い
- 離婚条件を柔軟に決められる
- 離婚原因は問われない
協議離婚では、裁判所の手続きにかかる手間や費用が不要であり、夫婦がお互いに納得すれば、すぐにでも離婚できます。
離婚条件も夫婦の合意で自由に決められるので、慰謝料や養育費について相場にとらわれず、高額の取り決めをすることも可能です。
また、「性格の不一致」や「価値観の違い」は法律上の離婚原因として認められていないため、裁判所の手続きで離婚するのは難しいのが実情です。しかし、協議離婚の場合は夫婦が合意さえすれば、どのような理由でも離婚できます。
②デメリット
一方で、協議離婚には以下のデメリットもあります。
- 相手と直接話し合わなければならない
- 合意がなければ離婚できない
- 一方的に不利な離婚条件で離婚してしまうことがある
協議離婚をするためには、夫婦で直接話し合わなければなりません。多くの場合、直接の話し合いは大きなストレスになることでしょう。相手からDVやモラハラを受けているケースでは、話し合うこと自体が難しいこともあります。
話し合いができたとしても、相手が離婚に反対したり、離婚条件で折り合えなかったりすると、離婚協議が長引いてしまいます。
また、専門的な知識が不足していると、不合理な離婚条件で離婚してしまうことが少なくありません。例えば、慰謝料や財産分与を請求できるのに請求しなかった、請求したとしても相場より大幅に低い金額で合意してしまった、といったケースがよくあります。
協議離婚の進め方と注意点
協議離婚は、以下の流れで進めていきます。ステップごとに注意点があるので、順に確認していきましょう。
①事前準備
協議離婚をスムーズに進めるためには、事前の準備が重要です。
なぜ離婚したいのかを確認するとともに、希望する離婚条件を検討し、離婚原因に関する証拠を確保し、離婚後の生活を考えておくことが必要となります。
②離婚を切り出す
準備が整ったら、離婚を切り出します。離婚したいという意思を伝えるとともに、離婚したい理由と希望の離婚条件も明確に伝えましょう。
離婚を切り出す際は、感情的にならず冷静になることが大切です。離婚した方がお互いのためになるという話し方が望ましいといえます。
離婚の切り出し方は口頭でも構いませんが、メールやLINEで伝えることも有効です。別居している場合は、郵便を送付することもあります。
記録に残る形で離婚を切り出せば、調停や裁判が必要となったときに証拠として利用できるというメリットもあります。
③離婚協議
離婚協議では、まず、離婚するかどうかについて話し合う必要があります。離婚について合意ができたら、次のような離婚条件を話し合って決めていきます。
- 慰謝料
- 財産分与
- 子どもの親権
- 養育費
- 面会交流
- 年金分割
未成年の子どもがいる場合は、必ず夫婦のどちらか一方を親権者に指定しなければなりません。その他の離婚条件は、取り決めるかどうかも自由です。
しかし、いったん合意すると原則として撤回できなくなるので、しっかり話し合って、ひとつずつ決めていくことが重要です。
相手と意見が対立する場合には一度の話し合いで決めようとせず、時間をかけてすり合わせていくようにした方がよいでしょう。
④離婚協議書の作成
話し合いがまとまったら、相手に約束を守ってもらうために離婚協議書を作成しましょう。
慰謝料や財産分与、養育費などを取り決めた場合は、公正証書(強制執行認諾文言付き)で離婚協議書を作成するのがおすすめです。こうしておくことで、相手が約束を守らない場合には裁判をすることなく、相手の財産を差し押さえてお金を回収できるようになります。
⑤離婚届の提出
最後に、離婚届を本籍地の役所に提出します。
離婚届には、証人2名の署名・押印が必要です。証人は成人であれば誰でもよく、何らかの法的責任が生じるものではありませんので、頼みやすい人に頼めばよいです。両親などの親族の他、会社の上司や友人・知人などでも構いません。
協議離婚を弁護士に依頼するメリット
協議離婚を弁護士に依頼すれば、以下のメリットが得られます。
- 相手と直接話し合う必要がない
- 適正な離婚条件を獲得しやすい
- 離婚協議書の作成を代行してもらえる
- 早期かつ円満な離婚が期待できる
弁護士は代理人として相手と交渉し、離婚協議書の作成まで代行します。そのため、依頼者にかかる手間や精神的負担が大幅に軽減されます。
法的に適正な離婚条件を弁護士が検討して交渉するので、一方的に不利な離婚条件を押し付けられる心配もありません。
相手と意見が対立する場合には、裁判になった場合の見通しを踏まえて論理的に相手を説得するので、早期かつ円満な離婚成立も期待できます。
弁護士に相談して、解決の糸口を
協議離婚では、相手との話し合いによってすべてが決まります。一人で離婚協議を進めようとすると、話し合いが進まなかったり、不利な離婚条件を押し付けられたりすることも少なくありません。また、相手から提案された離婚条件が良いものなのか分からないこともあります。
そんなときは、弁護士から専門的なアドバイスを受けることで、解決の糸口が見つかることでしょう。離婚を専門的に扱う弁護士だからこそ伝えられる解決策があるかもしれません。
当事務所では離婚問題に力を入れています。協議離婚について不安や疑問がある方は、お気軽に当事務所へご相談ください。