男性の離婚について
男性が離婚を考える理由は人それぞれ、様々なものがあります。
妻が不倫をした、妻からモラハラを受けている、ということもあれば、ご自身が不倫をして不倫相手と再婚したいとお考えのケースもあるかもしれません。妻と性格や価値観が合わないというケースも多いことでしょう。妻から離婚したいと言われ続けているが、思い当たる理由がないというケースも少なくありません。
理由は違えど、離婚を考えている男性は次の3つの不安を抱えていることが多いものです。
- 多くの金銭が必要になる(財産分与、養育費など)
- 子どもと会えなくなる
- 離婚後の生活が孤独になる
男性の離婚では、このようなリスクがあることも否定はできません。できる限り納得のいく結果を得るために、離婚前にしっかりと見通しを立てた上で準備を進めていきましょう。
男性は離婚条件で不利になりやすい?
法律上、離婚条件の有利・不利に男女差は設けられていません。しかし、実際には男性の方がたくさんのお金を支払う側となるケースが多いことから、「離婚条件は男性に不利」というイメージが生じるのだと考えられます。
離婚条件ごとに、本当に男性が不利になりやすいのかをみていきましょう。
(1)慰謝料
そもそも慰謝料とは、不法行為によって被害者が受けた精神的苦痛に対する損害賠償金のことです。
夫婦が離婚する場合、不貞行為やDV、モラハラ、正当な理由のない性交拒否などの不法行為を行った側が、相手方に対して慰謝料を支払う義務があります。したがって、例えば妻が不倫をした場合には、妻から夫へ慰謝料を支払わなければなりません。
ただ、一般的に「離婚の慰謝料は男性が支払うもの」というイメージを持っている人が多いためか、妻に対して慰謝料を請求しないケースも少なくありません。請求する場合でも、相場より大幅に低額の慰謝料で合意することがよくあります。
それに対して、夫が不倫などをした場合には、妻が相場どおり、あるいは相場を超える慰謝料の支払いを請求するケースがほとんどです。
夫として泣き寝入りしたくない場合は、妻の言い逃れを許さず、離婚調停や離婚裁判といった法的手続きで相場どおりの慰謝料を請求することが可能です。
(2)財産分与
財産分与は、婚姻中に夫婦が協力し合って築いた財産を原則として2分の1ずつに分けるものです。
多くの場合は夫名義の財産の一部を妻に渡すことになるため、それだけでも男性にとっては負担に感じてしまうことでしょう。
また、妻が専業主婦のケースでも、基本的には2分の1の財産を分けると考えられています。夫が収入を得るための労働と妻の家事労働は、経済的に同等の価値があるものと考えられているからです。
ただし、夫の特別な才能や努力によって豊富な財産を築いたと認められる場合(夫が大企業の経営者や医師の場合など)は、夫が財産を多めに取得することも認められます。
基本的には2分の1ずつとなることが多いですが、固定観念にとらわれることなく、夫婦の実情に応じて財産分与割合を検討し、交渉するとよいでしょう。財産分与の割合を2分の1にしなくても、夫婦で財産の分け方に合意すれば、財産分与としては有効になります。
(3)養育費
離婚して妻が未成年の子どもを引き取った場合は、通常、夫から妻に対して養育費を支払う必要があります。夫婦が離婚しても子どもとの縁は切れないため、離婚後も両親が養育費を分担して負担しなければならないからです。
養育費は両親の収入や資産の状況に応じて分担すべきものなので、収入が多い方の親から収入が少ない方の親へ支払うことになります。一般的には男性の方が女性より収入が多いため、元夫から元妻へ養育費を支払うケースが多いのです。
ただ、養育費は元妻の生活を支えるためのお金ではなく、子どもの生活や教育を健全にするための大切なお金です。そのため、元妻に対する不満とは切り離して、子どものために適切な金額の養育費を支払うようにしましょう。
養育については、裁判所のホームページに基準が載っています。一度、見てみると参考になるでしょう。
裁判所ホームページ⇒こちらをクリック
男性は離婚すると子どもに会えなくなる?
実情として、離婚後に子どもと会えなくなる男性は少なくありません。その大きな理由のひとつとして、親権で争いになった場合、女性が有利になる傾向があることが挙げられます。
(1)親権の問題
離婚調停や離婚裁判で親権を争う場合、裁判所は「継続性の原則」や「母性優先の原則」を重視します。
つまり、今まで妻が主として子育てをしてきたのであれば、離婚後もその状態を継続した方がよいと判断されやすいということです。また、妻が子どもを連れて別居しているため、
子ども妻とともに生活を継続している実態も考慮されます。それに加えて、一般的には女性の方が子どもの身の回りを世話することに長けているので、最初から親権者争いでは女性の方が有利といっても過言ではありません。
男性が親権を獲得するためには、離婚前から子育てに積極的に関わって子どもに十分な愛情を注いでおくことと、離婚後に子育てに協力してくれる人を確保するなどして養育環境を整えておくことが最低条件となります。ただ、裁判所の実情としては、子どもを連れて別居した妻側に有利になることに変わりません。
(2)面会交流の問題
親権を獲得できなかった親は、子どもと定期的に会って交流を図る「面会交流」を行う権利があります。
ところが、元妻が「元夫と関わりたくない」「子どもにも元夫と関わらせたくない」などの感情的な理由で面会交流を拒否するケースも少なくありません。
正当な理由なく面会交流を拒否することは違法なので、元夫は元妻に対して、「面会交流に応じなければ制裁金を課す」という手続きで間接的に強制することも考えられます。しかし、直接的な強制力をもって面会交流を実現させることはできません。
元妻が面会交流に応じない場合、元夫としては、家庭裁判所に面会交流調停を申し立てるなどの法的な手段で、子どもとの面会を求めることができます。
現実的な問題として、元夫と元妻の人間関係がある程度築かれていないと子の面会交流は難しいとも言えます。離婚時に、きちんと面会交流の取り決めを行い、面会交流が実施できる関係を築くことが大切です。
男性の離婚後の生活は孤独になる?
女性は離婚によって自由が増える傾向があるのに対して、男性の離婚後の生活は孤独になりやすいと言われています。
男性には、仕事の能力はあっても家事が苦手で、家族以外に親密な話し相手もいないという人が少なくありません。そんな男性の元から妻と子が去ってしまうと、とたんに孤独になってしまうのです。
たしかに、そのようケースも多々ありますが、離婚後の生活がどのようなものになるのかは人によって違います。また、気持ちの持ち方によっても違ってくるはずです。
不仲となった妻と無理に結婚生活を続けることは、幸せではないはずです。それよりも、関係を解消して、仕事や趣味に打ち込んだり、新たなパートナーを見つけて幸せな家庭を築くことを目指した方が、今後の人生は充実するのではないでしょうか。
男性にとっても、離婚は人生の一大事です。悔いの残らない選択をして、離婚後の人生を充実したものにしていただくためには、弁護士に相談して専門的なアドバイスを受けることをおすすめします。
当事務所にも、様々な離婚問題を解決した実績が豊富にございますので、お困りの方はお気軽にご相談ください。