モラルハラスメントとは
モラルハラスメント(略して「モラハラ」)とは、道徳や倫理に反した嫌がらせをして相手に精神的苦痛を与える行為のことです。DV(ドメスティック・バイオレンス)のように身体的な暴力ではなく、言葉や態度による精神的な暴力のことを指します。
夫(または妻)に日々の言動によって精神的に傷つけられている場合、あなたはモラハラの被害に遭っているのかもしれません。
モラハラは離婚原因になることもありますので、適切に対処していきましょう。
モラハラに当たる行為
夫婦間でよくあるモラハラ行為の例として、次のようなものが挙げられます。
- 仕事をしている自分を誇りに感じている
- 専業主婦をばかにする
- 気に入らないことがあると物を壊す
- 俺が食わせてやっているだろと平気で言う
- 「こんなことも分からないのか?」などとばかにして言う
- 家事は妻が行って当然であり、まったく関心も理解も示さない
- 自分に非があっても絶対に謝らない
- 意味不明な理由でキレて、その後、無視する
- 外では子ども好きな良い父親を演じたがる
- 反論されると、異常なまでに不機嫌になったり、怒ったりする
以上は、あくまでも一例に過ぎません。この他にも、言葉や態度による暴力や嫌がらせで相手を精神的に傷つけるような行為は、モラハラに当たる可能性があります。
モラハラをする人の特徴
モラハラをする人の最大の特徴は、自分が相手を傷つけていることに気づいていないことです。自分の信念に基づいて、あくまでも正しいことをしていると信じています。
その他にも、モラハラをする人は次のような特徴を持っていることが多いです。
- 外面は良い
- 家庭内では自分の優位性ばかりをアピールする
- 価値観の違いを許容しない
- 共感力が弱い
- 非常に優しいときもある
- 自分のやり方を妻(夫)に押し付ける
- 嫉妬深い
- 心を許せる友人がいないか、少ない
その一方で、モラハラの被害に遭っている人には、「モラハラに気づいていない」「自分はが悪いと思っている」といった特徴があります。そのため、モラハラ行為が繰り返され、うつ病を発症するなどの深刻な被害を受けてしまう人も珍しくありません。
あなたの配偶者が以上の特徴に複数該当する場合は、モラハラ夫(妻)なのかもしれませんので、以下の解説を参考にして適切に対処することをおすすめします。
モラハラは離婚原因となるか
配偶者のモラハラによって夫婦関係が破綻していると認められる場合には、民法第770条1項5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当し、離婚原因となります。
あなたが配偶者の言動によって心身が疲弊していて、「もうこの人とはやっていけない」と感じているのであれば、離婚原因となる可能性が十分にあります。
ただし、モラハラ行為がたまにしか行われていない場合(年に数回など)や、あなたの方も言い返したり無視したりして対等に応戦しているような場合は、離婚原因となる可能性は低いです。
モラハラで離婚する場合の慰謝料の相場
モラハラで離婚する場合の慰謝料の相場は、おおよそ50万円~300万円程度です。裁判で離婚が認められる場合には、100万円~200万円程度となることが比較的多いです。
実際の金額は、モラハラ行為の内容や程度、回数、期間、精神的損害の状況などによって様々に異なります。
モラハラが原因で被害者がうつ病などの精神疾患を発症した場合には、300万円を超える慰謝料が認められることもあります。
モラハラで離婚する方法
配偶者のモラハラを理由として離婚したいとお考えの方は、以下の手順で離婚手続きを進めていきましょう。
(1)話し合い
まずは、夫婦で話し合うことが基本です。合意ができれば、離婚原因に該当しないケースでも協議離婚ができますし、慰謝料などの離婚条件も自由に決められます。
ただし、相手はモラハラを自覚していないことが多いので、夫婦だけでの話し合いは難しい場合もあります。
(2)離婚調停
協議離婚ができない場合は、家庭裁判所で離婚調停を申し立てます。
調停では、中立・公平な調停委員が話し合いを仲介してくれます。モラハラ行為の実態や精神的損害の状況を調停委員に対して具体的に説明すれば、調停委員から相手方に対して離婚を勧めてくれることもあります。
合意ができれば、調停離婚が成立します。
(3)離婚裁判
調停もまとまらなかった場合は、離婚裁判を提起します。
裁判では、モラハラ行為の実態や精神的損害の状況を証明できる証拠を提出することが不可欠です。証明に成功すれば、相手方が離婚に反対していても、判決で強制的に離婚が命じられます。
モラハラでスムーズに離婚するコツ
配偶者のモラハラでスムーズに離婚するためには、以下の3つのコツがあります。
(1)証拠の確保
まずは、モラハラの証拠を確保することです。夫婦間の話し合いの際にも、証拠があれば言い逃れを許さず離婚を迫ることができます。離婚調停でも、証拠を提出すれば調停委員にこちらの言い分を信用してもらい、味方になってもらえる可能性があります。
モラハラ行為は客観的な証拠として残りにくいものですが、相手方の発言を録音・録画したデータや、日々のモラハラ行為を継続的に記録した日記などが有効な証拠となります。
(2)別居する
話し合いがスムーズに進まない場合には、別居することも有効です。別居すること自体、夫婦関係が破綻していることの証左となるので、離婚が認められやすくなることがあります。別居期間が長引くと、それだけ離婚が認められる可能性が高まります。
また、別居することによって相手方がモラハラを自覚して反省する可能性もあるので、夫婦関係の修復を目指したい場合にも別居がおすすめです。
(3)弁護士に依頼する
離婚手続きを弁護士に依頼すれば、弁護士が相手方との話し合いを代行してくれるので、あなたは相手方と直接やりとりする必要がありません。弁護士が法的観点から論理的に交渉し、説得してくれるので、スムーズな離婚が期待できます。
離婚調停や離婚裁判が必要となった場合も、弁護士が全面的にサポートしてくれます。
弁護士に相談するだけでも、離婚の可否や慰謝料額などの離婚条件に関する見通し、さらには証拠の集め方などについて具体的なアドバイスが受けられます。
モラハラ被害に遭っていると、精神的に弱っているため、どうすればよいのかを考えることも難しいことが多いものです。離婚をお考えの方も、夫婦関係の修復を望まれる方も、まずは弁護士に相談して状況を整理することから始めてみてはいかがでしょうか。