親権者について
未成年の子どもがいる夫婦が離婚するときには、どちらか一方を親権者に指定しなければなりません。そのため、親権をめぐって激しい争いになることが多々あります。
離婚後に子どもの親権者になりたいとお考えの方は、親権者の判断基準や親権者争いを有利に進めるコツを知っておきましょう。
親権とは
親権とは、未成年の子どもの世話をしたり、財産を管理したりする権利のことです。
権利というよりは、子どもに必要な教育やしつけをしたり、財産を守ったりしなければならない義務という側面が強いといえます。それでも、親にとっては子どもを育てることこそが幸せであり、離婚しても親権は手放したくないと考える人が多いものです。
現在の日本の法律では、婚姻中は父母が共同の親権を有していますが、離婚後はどちらか一方のみが単独で親権を有することになります。国は離婚後も共同親権を認める法案を検討中ですが、共同親権が導入されたとしても、子どもと一緒に暮らせるのは一方の親のみです。そのため、今後も離婚時の親権者争いは重要な問題であり続けるでしょう。
親権の種類
親権は、子どもの身の回りをする「身上監護権」と、子どもの財産を管理する「財産管理権」の2つの要素からなるものです。
離婚するときには、例えば身上監護権は母親が持ち、財産管理権は父親が持つというように、2つの権利を分けることも可能です。しかし、身上監護権と財産管理権を別々に分けるとデメリットが大きいため、実際に分けられるケースは多くはありません。
そのため、離婚後の夫婦は「親権者」と「非親権者」に分けられてしまうのが実情です。
親権者の判断基準
親権者の指定は、子どもの健全な成長のために、どちらが子育てをするのが望ましいかという観点から行うべきものです。その判断基準として、調停や裁判では以下の要素が重視されます。
(1)継続性の原則
親の離婚によって子どもが受ける精神的な動揺を抑えるために、できる限り現在の子どもの生活状況を変更せず、継続することが望ましいと考えられています。そのため、今まで主に子育てを担当していた側の親が親権者争いで有利になることが多いです。
(2)母性優先の原則
一般的に女性の方が子どもの身の回りを世話することに長けているので、母親の方が親権者争いで有利になりやすいのが実情です。この傾向は、子どもの年齢が低ければ低いほど顕著です。
(3)兄弟姉妹不分離の原則
子どもが複数いる場合には、できる限り兄弟姉妹を引き離さない方がよいと考えられています。例えば、「長男の親権は父に、二男の親権は母に」と分けるようなことは、裁判ではほとんど行われていません。
(4)子どもの意思
子どもが15歳以上の場合は、子どもの意思が尊重されます。つまり、15歳以上の子どもは親権者を選べるということです。15歳未満の場合でも、子どもの意思が参考要素として考慮されることがあります。
(5)親の経済・健康の状態
親権者となろうとする親の経済や健康の状態が、一人で子育てをしていくことが可能な状態かどうかも考慮されます。ただし、非親権者には養育費の支払い義務があるため、経済状態はさほど重要視されません。
(6)協力者の有無
一人で子育てをすることが難しい場合には、両親(子どもにとっての祖父母)や親戚など、子育てに協力してくれる人が近くにいるかどうかも重要です。
(7)面会交流の許容性
親権者となった場合に、子どもと非親権者との面会交流を許容するかどうかも、親権者として適しているかどうかの判断基準のひとつとされています。
親権者を決める方法
親権者を決める方法は、以下のとおりです。
(1)話し合い
基本的には、夫婦で話し合って親権者を指定します。夫婦間の問題とは切り離して話し合い、どちらが子どもを引き取るのが子どもにとって幸せなのかを考え、お互いに納得して決めるのが理想的です。
(2)調停
話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所で離婚調停を申し立てることになります。離婚問題や他の離婚条件と一緒に、親権者問題についても調停委員を介して話し合っていきます。
調停では、家庭裁判所調査官による詳しい調査が行われることが多いです。その調査結果や調査官の参考意見は、親権者を判断する際に重要視されます。
ただ、調停は話し合いの手続きなので、合意ができなければ調停不成立となります。
(3)裁判
調停でも親権者を決められなかった場合、離婚を求める側が離婚裁判を提起し、裁判所の判断を求めることになるのが一般的です。
離婚が認められる場合、裁判所は当事者が提出した主張や証拠を精査し、親権者としてよりふさわしい方を親権者に指定する旨の判決を言い渡します。
親権者争いを有利に進めるコツ
親権者争いを有利に進めるためには、日頃から子育てに深く関わって十分な愛情を注いでおくことが大切です。そして、その様子を日記に記録したり、こまめに写真を撮影するなどして証拠化しておきましょう。
外で働く父親はどうしても不利になりやすいですが、時間の許す限り子育てを手伝うようにしましょう。離婚後の養育に備えて、子育てに協力してくれる人や保育園などを確保しておくことも重要です。
母親であっても、育児放棄をしていると認められるような状況では親権者になれない可能性が高いです。くれぐれも、子どもに対しては十分な愛情を注いでおきましょう。
親権者を決めるときの注意点
親権者を決めるときには、子どものことを第一に考えるべきです。子どもと離れたくない、相手に子どもを渡したくないといった個人的な感情だけで親権を主張することは控えましょう。
また、どうしても子どもと離れたくないという気持ちがあったとしても、無断で子どもを連れ去ることは絶対にしてはいけません。相手の身上監護権を侵害することになるため、誘拐罪に問われるおそれがあります。民事上も、慰謝料を請求される可能性が高いです。
子ども親権をめぐる争いに疲れて、親権者を相手とする離婚届を提出するケースも想定されます。一旦親権者を相手方として離婚が成立すると、あとから、親権者を自分に変更してもらうことはとても難しいので注意してください。
場合によっては、親権を獲得できなかったとしても、後に事情が変化した場合には親権者の変更が認められることがありえます。面会交流を活用して子どもとの絆をしっかりと紡ぎ、ある程度の期間が経過したら「親権者変更調停」を申し立てるのもよいでしょうが、親権者変更が認められるハードルが高いのは先ほど述べたとおりです。
親権者争いでは、相手との話し合いや調停・裁判を弁護士に任せることで、無理な結果を避けれることもあります。また、親権者の指定では譲歩したものの、結果的に、十分な面会交流につなげることも考えらえます。
離婚後もご自身の手でお子様を幸せに育てたいとお考えの方は当事務所へお気軽にご相談ください。