遺産分割調停とは? 遺産分割調停の流れとコツを説明

遺産分割の方法は基本的に相続人同士が話し合って決めますが、直接の話し合いがまとまらない場合には、遺産分割調停の利用を検討することになります。

遺産分割調停は裁判所で法律に従って進められる手続きですので、遺産分割調停で戸惑ったりしないためには法律上のルールを知っておくことが重要です。

そこで今回は、遺産分割調停の流れを解説するとともに、調停をうまくに進めるコツもご紹介します。

遺産分割調停とは

遺産分割調停とは、相続人全員が家庭裁判所を介して遺産の分け方について話し合う手続きです。

相続人だけで話し合っても遺産分割協議が成立しない場合は、家庭裁判所の調停委員会(裁判官と調停委員)の力を借りて合意による解決を図ることになります。

調停は訴訟とは異なり、あくまでも話し合いの手続きです。どちらかの言い分が全面的に通ることは少なく、通常はお互いが譲り合って解決を目指します。

遺産分割調停の流れ

遺産分割調停は、以下の流れで進んでいきます。

申し立て前の準備

遺産分割調停を申し立てるためには、申立書の他に当事者目録や遺産目録、相続関係を証明する戸籍謄本類、住民票、遺産に関する証明書類などを準備する必要があります。

費用としては、収入印紙代として1,200円、切手代として5,000円前後(当事者の人数や裁判所によって異なります。)が必要です。

なお、以下の点については事前に調査して確定しておかなければなりません。

・相続人の範囲
・遺産の範囲
・遺産の評価額
・遺言書の有効性

これらの点について争いがある場合は、遺産分割調停で解決する前に、訴訟等が必要となる場合もあります。

申し立て

遺産分割調停の申立先は、原則として相手方(複数名いる場合は誰か一人)の住所地を管轄する家庭裁判所です。ただし、相続人全員の合意が得られれば、どこの家庭裁判所に申し立てても構いません。

申し立ての際には、申立書その他の添付書類と費用を家庭裁判所の窓口に提出します。郵送で申し立てることも可能です。

調停期日

申し立てが受理されると、おおよそ1ヶ月半~2ヶ月後ころに第1回調停期日が指定されます。

指定された日時には当事者全員が家庭裁判所へ出頭します。申立人と相手方の控え室は別になっており、お互いに顔を合わせないように配慮されています。

そして、申立人と相手方は順番に入れ替わりで調停室に入り、調停委員と話をする形で話し合いが進められていきます。

遺産分割調停が1回の期日で終了するケースは少なく、次の期日が指定されることが多いです。以降、概ね月に1回程度のペースで調停期日が設けられ、話し合いを進めていきます。

期日間にやるべきこと

調停期日の中で、調停委員から次回期日までに何らかの資料を提出したり、主張をまとめておいたりするように指示されることがあります。遺産分割調停を円滑に進めるため、調停委員の指示には従いましょう。

調停委員の指示がなくても、相手方の反論を踏まえて資料を準備し、期日間に提出しておくと、よりスムーズに調停を進めやすくなります。

調停成立

調停委員を介して話し合った結果、当事者全員が遺産分割の方法について合意すれば、調停成立です。

調停が成立すると、合意した内容を記載した調停調書が作成されます。調停調書には確定判決と同じ法的効力があるので、当事者は記載内容に従って遺産を分割することになります。

調停の申し立てから成立までの期間は、半年~1年程度のケースが比較的多いです。

調停不成立の場合は審判

調停期日を重ねても当事者が合意できなかった場合は調停不成立となり、自動的に審判の手続きに移行します。

審判では、当事者が提出した主張や証拠を踏まえて、裁判所が遺産分割の方法を定めて当事者に命じます。

審判に不服がある当事者は即時抗告を申し立てることができますが、審判書を受け取った日の翌日から2週間以内に即時抗告をしなければ審判が確定します。審判が確定すると、確定判決と同じ強制力を持ちます。

遺産分割調停をうまく進めるコツ

遺産分割調停をうまく進めるためには、次の3つのコツがあります。

筋の通った主張をする

調停ではご自身の意見を明確に主張する必要がありますが、法律に従い、筋の通った主張をするように心がけましょう。

感情的な主張をしても意味がないばかりか、調停委員の印象が悪くなり、話し合いが相手方の有利な方向に進んでしまう可能性があります。

例えば、ご自身が法定相続分よりも多くの遺産を取得したいと主張するのであれば、ご自身に寄与分があることや、相手方に特別受益があることなど、法的に意味のある主張をすることが大切です。

客観的な証拠を提出する

筋の通った主張の内容を裏付ける客観的な証拠を提出すれば、さらに調停を有利に進めやすくなります。

例えば、寄与分を主張するなら、被相続人の療養看護に尽くしてきたことが分かる証拠が重要です。病院の診断書や領収書、介護サービスを利用した際の領収書など、できる限り客観的な証拠を探してみましょう。

調停委員が「審判になれば申立人の主張が通りそう」と判断すれば、相手方に対して説得を試みてくれることもあります。

相手方の言い分に耳を傾ける

調停は訴訟のように白黒を付ける手続きではありませんので、相手方の言い分をしっかり理解することも大切です。

法的に筋の通らない主張に対しては論理的に反論する必要がありますが、相手方の感情も理解し、譲れる部分は譲る姿勢を見せましょう。そうすることで調停委員の印象もよくなり、話し合いをスムーズに進めやすくなります。

こちらが先に相手方の言い分を尊重することで、相手方も歩み寄りの姿勢を見せてくることもあります。言い分を全面的に通すことは難しいですが、お互いが歩み寄ることで納得のいく解決が期待できるでしょう。

遺産分割調停の申し立ては弁護士に相談を

遺産分割協議が自由な話し合いの手続きであるのに対して、遺産分割調停は法律のルールに従って話し合う手続きです。

遺産分割調停で実のある話し合いをするためには、申し立て前の準備段階から法的な主張を整理し、申立書や証拠書類などを揃えていく必要があります。

遺産分割調停が進む際には、戦略的に調停委員と協議することやその場で判断が必要なこともあります。遺産分割は専門的な知識やノウハウを要しますので、遺産分割調停をお考えなら弁護士へのご相談をおすすめします。

当事務所では遺産分割調停に力を入れております。お一人で遺産分割調停のことで悩むよりも、試しに当事務所へご相談していただければ、お一人で調停をする場合のメリット・デメリット等も一緒に検討することができます。

遺産分割は親族間の心情的な問題、財産の把握・評価など簡単ではない問題があります。一人で抱え込まず、早めに弁護士に相談してみるとよいでしょう。