後遺障害等級認定の異議申立てとは

治療、後遺障害等認定

交通事故によるけがで後遺症が残ったとき、後遺障害等級認定の申請をしても非該当となったり、思ったより低い等級に認定されたりすることがあります。

そのような際に、検討していただきたいのが「後遺障害等級認定の異議申立て」です。これをすることで、後遺障害等級の再審査をしてもらうことができます。

この記事では、後遺障害等級認定の異議申立てを効果的に行う方法をご紹介します。後遺障害等級の認定結果次第で受け取れる賠償金の額が大きく異なってきますので、ぜひ参考にしてください。

後遺障害等級の認定結果には異議申立てができる

後遺障害等級の認定は、損害保険料率算出機構が公正中立に行っています。原則として、審査は書類のみで行われますので、ときには誤った判断が下されることもあります。また、認定結果に不満が残ることもあるでしょう。

そのため、申請者が認定結果に納得できないときは再審査を求めることができる制度があります。それが「後遺障害等級認定の異議申立て」です。

異議申立ては無料で何度も行えますが、一度下された認定結果を覆すのは簡単なことではありません。単に「納得できないので再審査してください」というだけでは、同じ結果が返ってくるだけです。異議申立てをするなら、しっかりと準備をする必要があります。

異議申ての方法

異議申立ての手続きそのものは、それほど複雑なものではありません。必要書類を準備して、損害保険料率算出機構へ提出するだけです。

問題は、どのような書類を提出するかです。認定結果を覆すためには、当初の申請の際に提出しなかった(できなかった)新たな証拠資料を提出しなければいけません。

ここからは、異議申立ての手順をご説明します。

提出済み書類を確認する

当初の申請時の際に、以下のような書類を提出しているはずです。

  • ・診断書
  • ・診療報酬明細書
  • ・検査結果(レントゲン、CT・MRI画像など)
  • ・カルテ
  • ・事故発生状況報告書

これらの書類の一部が不足していたり、記載内容が不十分だったりすると、後遺障害等級が適切に認定されないこともあります。提出済み書類を再確認して、不足や不備があれば補いましょう。

新たな書類を準備する

当初の提出書類に明らかな不足や不備があった場合は別として、多くのケースでは新たな証拠資料が必要となります。

異議申立てで有効な証拠資料としては、主に以下のものがあります。

再検査の結果

後遺障害等級が適切に認定されない場合、そもそも障害の種類や程度に応じた必要な検査が十分に行われていない可能性があります。医師と十分相談のうえ、再検査を受けて新たな資料を準備しましょう。

セカンドオピニオンの意見書

医師は、必ずしも交通事故の後遺障害等級に詳しいわけではありません。実際のところ、どのような検査を行い、診断書にどのように書けば適切な後遺障害等級の獲得につながるのかを把握していない医師もいます。交通事故の負傷者を数多く診療している整形外科医などの診察を改めて受けるのも有効です。再検査を受けて、その医師に意見書を書いてもらうことができれば有力な証拠資料となります。

陳述書

陳述書とは、事故に遭った状況や、事故でけがをしたときから症状固定時、さらに現在までの症状の経過、仕事や日常生活への影響などを自分で詳しく記載する書面のことです。

通常は、事故発生状況報告書や医師が毎月発行する診断書、継続的に記録されたカルテなどでこれらの事実を証明しますが、記載が不十分なことも少なくありません。その場合、陳述書で分かりやすく説明することで適切な後遺障害等級を獲得できる可能性が高まります。

異議申立書の作成

新たな証拠資料がそろったら、異議申立書を作成します。異議申立書に決まった様式はありませんが、保険会社に申し出ればフォーマットの用紙をもらえます。

異議申立書には、当初の審査で考慮されなかった事実などの不備を指摘したうえで、新たな証拠資料に基づいて障害の内容や程度を具体的に記載します。

必要書類の提出

必要書類の提出先は、以下のとおりです。

  • ・事前認定の場合……加害者が加入している任意保険会社
  • ・被害者請求の場合……加害者が加入している自賠責保険会社

事前認定とは、異議申立ての手続きを保険会社に一任する方法です。一方、被害者請求とは、自分で手続きを行う方法です。後でご説明しますが、異議申立てをするなら被害者請求で行うのがおすすめです。

異議を申し立てるときの注意点

後遺障害等級認定の異議申立てをする際は、次の3点にご注意ください。

損害賠償請求権には時効がある

交通事故の損害賠償請求権には時効があります。後遺障害に関する損害賠償請求権の時効期間は、症状固定日の翌日から5年(2020年3月31日以前の事故については3年)です。

一度の異議申立てで結果が変わらなかった場合は何度でも異議申立てができますが、時効期間を過ぎないように注意しましょう。

裁判は最終手段

後遺障害等級の認定結果を争う方法は、異議申立てだけではありません。民事裁判で争うことも可能です。

裁判でも適切な認定を受けるには、確かな証拠を提出する必要があります。いきなり裁判をした場合、判決内容に納得できなくても、判決が確定するとそれ以上は争えなくなります。裁判をする前に、異議申立てで認定結果を正しておくほうが得策と言えます。

異議申立ては被害者請求で

異議申立ての方法は、事前認定と被害者請求の2種類です。

事前認定は保険会社の担当者が手続きを行ってくれますが、新たな証拠資料を積極的に集めてくれるわけではありません。そのため、認定結果が覆る可能性は低くなります。

一方、被害者請求は、自分で新たな証拠資料を集めて自由に提出できますので、適切な結果が得られる可能性が高まります。

当初の申請を事前認定で行っていた場合でも、異議申立ては被害者請求で行うことができます。異議申立てをするなら、被害者請求のほうが望ましいでしょう。

異議申立ては弁護士に依頼するのがおすすめ

後遺障害等級認定の異議申立てを意味のあるものにするためには、当初の認定内容を精査して何が足りなかったのかを検討し、新たな証拠資料を集めて説得的な異議申立書を作成する必要があります。これらの作業には高度な専門知識が求められますので、交通事故の損害賠償請求に精通した弁護士に依頼することをおすすめします。

弁護士費用が気になる方もいると思いますが、適切な後遺障害等級を獲得できれば、弁護士費用を支払っても余りある賠償金が得られます。また弁護士費用特約に加入していれば、自己負担ゼロで弁護士に相談や依頼ができます。

後遺障害が残ったのに適切な認定が得られなかったら、納得がいかないものといえます。また後遺障害にふさわしい賠償金を受け取れなければ、今後の人生が苦しいものになりかねません。後遺障害等級の認定結果に納得できないときは、まずは弁護士へご相談ください。