意外と大きい「家事従事者の休業損害」
休業損害とは
交通事故の被害に遭って、交通事故によるけがが治癒するか、症状固定になるまで十分な就業ができなくなり、その間に得られなくなった給与や収入などの損害を「休業損害」と言います。
会社員などの給与所得者は、基礎収入に休業期間を掛けることで計算できます。有給休暇を利用した場合も休業期間に含まれるので、休業損害が認められます。
会社員などの給与所得者の休業損害は、計算方法が明確なので、休業損害で大きく金額が上下することは多くない印象があります。
主婦などの家事従事者にも休業損害が認められる
以前は、主婦などの家事従事者は実際に収入を得ていないことから、休業損害が認められないと考えられていました。
炊事や洗濯、子どもの世話などの家事労働は、給与のように毎月決まった額のお金が支払われるものではありません。しかし、現在は財産的な価値があるものとして考えられており、現金収入はなくても、交通事故によるけがで家事従事者が休養した場合は、休業損害が認められています。
女性の平均賃金から算定
自賠責保険の基準では、休業損害は原則として1日当たり6,100円とされています。例えば、交通事故のけがで仕事ができなかった期間が10日の場合、休業損害の額は「6,100円×10日」で6万1,000円になります。
古い裁判例には、家政婦の平均賃金を家事従事者の休業損害の参考にすることが合理的だとした判例もありますが、一般的に賃金センサスの女性平均賃金(全年齢)を基準に算定されます。
賃金センサスの女性平均賃金(全年齢)は毎年変わりますが、約380万円ぐらいですので、これを365で割ると、1日当たりの賃金は1万円を少し超える金額になります。弁護士が交渉する際は、こちらの基準を用いることのほうが多いでしょう。
なお、家事従事者が高齢者の場合、年齢別の平均賃金を基準にする傾向があります。
有職主婦(仕事をしている主婦)の場合
仕事をしている主婦の場合、実際の収入と賃金センサスの女性平均賃金を比較し、高いほうを基礎収入として算出します。実際の収入のほうが高ければ、実際の収入が基準になり、賃金センサスの女性平均賃金のほうが高ければ、賃金センサスの女性平均賃金が基準になります。
家事従事者が男性の場合は?
現在は、男性が家事労働に従事することも珍しくありません。「主夫」という言葉が一般に浸透してきたこともあり、高齢の妻を夫が介護するケースも珍しくはありません。
家事従事者に当たるかどうかは、性別や年齢を問わず、実際に家族のために家事労働に従事しているかで判断されます。男性でも、実際に家事労働に従事していて、交通事故によるけがのために家事労働に支障が生じた場合は、休業損害が認められます。
示談の案内に記載がなくても、相談を
保険会社からの示談金額の一覧を見ると、家事従事者であるのに休業損害が記載されていないことがあります。交通事故によるけがの治療のために入院や通院をして、家事労働に支障が生じた場合は、家事労働に関する休業損害を請求することができます。
保険会社との交渉が難しかったり、適正な家事労働の休業損害額が分からなかったりする場合は、気軽に弁護士に相談してください。