離婚・男女問題 2024.7.27
裁判離婚とは
裁判離婚とは
夫婦の話し合いでは協議離婚ができず、調停でも離婚できなかった場合は、「裁判離婚」を検討することになります。
裁判離婚とは
裁判離婚とは、家庭裁判所が言い渡す判決によって成立する離婚のことです。当事者は確定した判決には従わなければならないので、強制的な離婚が可能となります。
ただし、裁判(離婚訴訟)を提起するためには、先に離婚調停をしておくことが必要です。家庭内の問題については、まず話し合いによる解決を図るべきと考えられているからです。このことを「調停前置主義」といいます。
裁判離婚と協議離婚、調停離婚の違い
裁判離婚には、以下のように協議離婚や調停離婚とは大きく異なる特徴があります。
(1)離婚についての合意は不要
裁判離婚では、夫婦の一方が離婚に反対していても強制的に離婚が成立します。
協議離婚と調停離婚では、夫婦が合意しなければ離婚は成立しません。お互いの意見が対立して折り合えない場合には、いつまでも離婚できないことになります。
相手方の意向にかかわらず強制的に離婚できるという点は、裁判離婚の大きなメリットといえるでしょう。
(2)法定離婚事由が必要
強制的な離婚が認められるためには、法定離婚事由が必要です。この点は裁判離婚のデメリットともいえます。
法定離婚事由とは、裁判で離婚が認められる理由として民法第770条1項で定められた離婚原因のことで、以下の5つがあります。
①不貞行為
不貞行為とは、配偶者以外の人と肉体関係を持つことです。相手方が不倫や浮気をした場合は、不貞行為に該当する可能性が高いといえます。肉体関係まで至らなくても、度を越えた緊密な交際は同項5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する場合があります。
②悪意の遺棄
悪意の遺棄とは、民法第752で定められた夫婦の同居・協力・扶助義務などを果たさないことです。相手方が家を出て帰ってこない、収入があるのに生活費を渡してくれない、などの場合は悪意の遺棄に該当する可能性があります。
③3年以上の生死不明
配偶者の生死を確認できない状態が3年以上続いていることをいいます。単なる行方不明とは区別され、生きていることが推定される場合には生死不明には当たりません。
④強度の精神病
配偶者が重い精神病を患い、回復の見込みがない場合に離婚を認めるものです。統合失調症や躁うつ病などが典型例ですが、精神病になったというだけで離婚が認められるわけではありません。まともに意思疎通ができず、夫婦の同居・協力・扶助義務などを果たせない状態であれば離婚が認められる可能性があります。
⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由
上記の4点に当てはまらなくても、夫婦関係が修復不可能なほどに破綻している場合には離婚が認められます。DVやモラハラ、セックスレスなどが該当することがあります。その他にも、別居期間が長期間(一般的には5年以上)に及ぶと、夫婦関係が破綻していると認定されやすい傾向にあります。
(3)証拠が必要
法定離婚事由があることを裁判所に認定してもらうためには、その証拠が必要です。この点は裁判離婚のデメリットともいえますが、証拠があれば強制的に離婚できるという意味ではメリットともいえます。
証拠で法定離婚事由の内容を証明できれば、離婚とともに多くの場合は慰謝料請求も認められます。ただし、財産分与や子どもの親権、養育費など他の離婚条件を裁判所に決めてもらうためには、それぞれの証拠を提出する必要があります。
離婚裁判の流れ
離婚裁判は、次のような流れで進められます。
(1)訴えの提起
離婚裁判を提起するためには、訴えの内容やその根拠となる事実を記載した「訴状」と証拠を家庭裁判所へ提出します。提出先は、ご自身または配偶者がお住まいの地域を管轄する家庭裁判所です。
(2)裁判期日
訴状が受理されると、1ヶ月半~2ヶ月後ころに第1回目の裁判期日が指定されます。裁判期日では、原告(訴えた人)が訴状を陳述し、被告(訴えられた配偶者)が反論を記載した答弁書を陳述します。それぞれが提出した証拠も裁判所によって調べられます。
以降、概ね1ヶ月1度程度のペースで裁判期日が指定され、当事者双方が主張や証拠を提出し合い、争点を煮詰めていきます。
(3)和解協議
多くの場合、主張と証拠が出そろった段階で和解協議が行われます。この時点で夫婦が合意すると、「和解離婚」が成立します。
有利な和解案で離婚するためにも、的確な主張と有力な証拠を提出しておくことが重要です。
(4)尋問
和解が成立しない場合は、証人や原告・被告本人の尋問が行われます。尋問における発言内容も、裁判所が事実を認定するための証拠となることがあります。
尋問終了後、再度の和解協議が行われることも多いです。
(5)判決
尋問後の和解も成立しなかった場合は、最終的に裁判所が判決を言い渡します。法定離婚事由の内容が証明された場合には離婚が命じられるとともに、離婚条件についても原告が求めた内容の範囲内で裁判所が決めます。
判決書を受け取った後、2週間以内にお互いが控訴しなければ判決が確定し、裁判離婚が成立します。
(6)離婚届の提出
判決確定後、戸籍を変更するために離婚届を役所に提出する必要があります。離婚届は夫婦のどちらか一方が単独で提出できます。証人の署名・押印も不要です。
離婚日は、判決の確定日です。
離婚裁判にかかる期間と費用
離婚裁判は、和解が成立する場合には6ヶ月程度で終了することもありますが、判決を求める場合には1年前後かかることが多いです。控訴された場合には、数年かかることも珍しくありません。
裁判で離婚を成立させるためには、じっくりと腰を据えて取り組む必要があるでしょう。
離婚裁判をご自身で提起する場合、費用は数万円程度です。ただし、慰謝料などの請求額や、どこの裁判所に提起するかなどによって金額が異なる場合があります。
弁護士に依頼する場合には、さらに数十万円~100万円程度の弁護士費用がかかります。
離婚裁判を弁護士に依頼するメリット
裁判手続きは複雑で専門的な知識が要求されますし、手間や時間もかかるので、弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士に依頼すれば、複雑な裁判手続きを一任できます。離婚条件も適正に考えてもらえますし、裁判に必要な証拠の収集もサポートしてもらえます。専門的なサポートを受けることで、納得のいく結果が期待できることでしょう。
裁判離婚では、離婚できるかどうかの判断が難しいことも多いです。その他にも、さまざまな不安や疑問があることでしょう。当事務所ではご依頼された方とともに納得のいく解決を目指すことを重視しております。裁判離婚をお考えの方は、お気軽に当事務所へご相談ください。